この感情はなんなのか。 ただ気になるだけって言うか、気付けば目で追ってしまったり、声に反応してしまったり。 きっとそんな大した感情なんかじゃないと思うんだけど (だって食い物とかの考えてる時のほうが、よっぽど楽しいし、ドキドキするし) なんっつーか、それでもやっぱり君の口から他の男の名前が出たりすんのは、非常におもしろくない。 それがあのくりくりの天然パーマ頭野郎だと思うと尚更腹がたつのだ。 |
「やばい!赤也超かわいい!」 ほら、また出たよ。の赤也病。 「なんてゆーか、もう赤也の周りだけ色が違うよね。赤也オーラってゆうの?」 「そんなもん見えねーよ。ばかじゃねーの?」 「丸井ってホントかわいくないよね。恋する気持ちがわかってない。お子ちゃまだし」 「っつーか、お前とタメだから」 「絶対嘘。仁王とか柳生っちのがよっぽど大人っぽいし。真田とタメだってのはあたしも認めたくないんだけどさ。ってかみんなきっとそうだよね?」 もう何度目になるだろう。と繰り返すこのやり取りは。 部活の始まるまえのグランドはまだ夏の残り香がつよく、暦ではとっくに秋だというのに靴紐を結ぶ間にかいた汗がじんわりとにじんだ。 コートにはちらほらと2年、3年部員が集まりだして素振りをしたり談笑をしたりしている中、1年部員たちはネットを張ったりボールの籠運びながら、ざわざわと賑わいをみせ始める。 そんな中、本来なら率先して1年達と練習準備を進めていなければならない筈のマネージャーであるは、俺の横にしゃがみ込んで目を輝かせて、50メートルほど離れた反対側のベンチに座る赤也を見つめながら、俺の苛立ちにきっと全く気づくこともなく言葉を続ける。 「あー、あたしもあと1年遅く生まれてればなぁ。赤也と同じクラスになったりとかも夢じゃなかったんだよね?あー、見たいなぁ、生授業中赤也。寝てたりしてさ、きっと超かわいいんだよ」 「そしたらお前、俺の後輩ってことになるな。 ちゃんと丸井先輩、って呼んで敬語使えよぃ」 「はあ?ばかじゃないの?なんであんたなんかに」 しゃがみ込んでいるはベンチに座る俺を生意気そうに睨んで相も変わらず可愛くないセリフを吐き捨てる。 「.....かわいくねぇな。っつーか、お前マネージャーだろ?さっさと働けよ。ばーか」 「もー!丸井のあほ!」 大きな目でギラリと睨みつけてそう言い捨てながら は思いっきり力を込めてタオルとドリンクを投げつけてきた。(なんて凶暴な女だ) そしてベンチに並べてあった両手いっぱいにドリンクを抱えて、反対側のコートの赤也のいるベンチの方へ向かって走ってゆく。長い髪がサラサラと揺れる。 なんとなくを目で追いかけたまま、こくんとドリンクを1口飲んだら粉で作ったやたらポカリが薄く感じた。ポカリすらもまともに作れねーのか、あいつは。 しかしそれでも、そんなトコでさえもかわいいとか思ってしまう俺は、やはり病気なのであろうか。 真っ黒の染めてない髪だけど、陽に透けたら茶色に透けるところだとか、化粧なんて全くしていないのにすごい長い睫だとか、真っ白ではなくほんのり日に焼けた肌だとか、少し身長が高いバランスの良いスタイルだとか、見た目のわりに少し低い声だとか。 そんな事を考えながらいつも俺がお前を見てるとか知らないんだろう? いつも赤也、赤也って赤也ばっかだもんな、お前は。 「うっわー、男の嫉妬は醜いっちゃよ、だーりん」 「誰だぃ、お前」 「.....お前の気持ちは以外にはバレバレなんじゃがのう」 ひょこりとベンチのうしろに現れた仁王をギロリと思い切り睨む。 仁王は目が合うとにやにやと性格が悪そうに(いや、悪いのか)笑いながらドリンクをこくんと飲んだ。「なんか、薄くなか?」 そう言ってぺロッと口元を舐めた。 「しかし肝心の は赤也しか目に入っとらんの、いつも赤也の側におる」 そんな事、言われなくたって知っている。 「丸井、 の事、赤也が入部する前の1年の時から好いとーからな。おもしろくないっちゃろ?」 「好いとーとか日本語喋れ、ここは日本だぃ、ばーか」 にやっとまた口元に性格の悪い笑みを浮かべてから「ま、頑張りんしゃい」と訳のわからない日本語を吐いて仁王は声を出して笑った。 好きなのかとか、好きじゃないとかよくわからない。なんでこんなにイライラするのだろうか仁王の言う以外にはバレバレらしい俺の気持ち。一体なんなのかそんな事、俺が1番知りたい。 |
「はやく、幸村くん戻ってこねーかなぁ?」 「わー、丸井ホモ発言」 「もー!仁王うっせーし!!!どっか行ったんじゃなかったのかよぃ!」 「貴様らそんなに元気が余ってるなら校庭でも走ってこんか!」 いつの間にかコートに来ていた真田がコートからこっちを向いて叫ぶ、その声に反応して と、赤也もこっちを向いた。ちくしょう、やっぱりなんか腹がたつ。 |