生まれて初めて付き合ってた男にブン殴られたので、その3倍にしてとりあえず殴りかえしたら無理やり犯られた。さっきまで彼氏だったはずの男が滑稽に腰を振り続ける間、殴られて熱をもった頬がじんじんと熱を持って、口の中にわずかに感じる鉄の味を噛みしめる。
何度も腰を振り終えて欲求を吐きだし終わったその男は、満足したようにあたしに背を向けて寝息をたて始めた。あまりにもむかついたので男が完全に眠りについたのを確認したあと、あそこに油性ペンで思いっきり落書きをして帰ってきた。もう二度と会いたくなんてない。

あたしもつくづく男を見る目がないもんだと、思う。






「うわー、なんやね、その頬」
「昨日、男と別れた」
の男って、あのなんや大学生とかゆー?」
「そう、チャラついてて、人の気持ちなんて全くわかんない強姦魔でバイオレンスな大学生」
「殴られたん?」
「3倍にして返してやったけど」
「は、さよか。怖かね」


あたしの発育は、たぶん、ちょっと異常だ。
初めてセックスをしたのは小学校5年の時。近所のお兄ちゃんと。それから塾の先生だとか、高校生、新任の体育教師。
色んな男たちがあたしを見るその邪で理解に苦しむその目にはきっと【女の子】だとか、【女子】だとかそんな可愛げのあるものなんかではなく、いつだって【性の対象】だった。 
あたしもあたしで特に悩んだり、疑問も特に持つことも今までなく、同級生の女子たちが交換日記やメール交換、男女の健全なお付き合いなどを始める頃には既にあたしはバンバン色んな男とやりまくってたもんだから、変な噂はそれなりに立つし、ましてややりたい盛りの同学年の男どもの目線なんて興味本位でギラギラしてるわ、女子からは煙たがられるわで。(自業自得、か。)
特に仲の良い学校のトモダチなんていないに等しく興味もなかった。唯一、あたしと同じ匂いを感じるこの【仁王】を除いては。

「こないだ校門トコで高校生の女があんたの事探してたよ」
「なんじゃソレ。知らんわい」
「S女学院の制服着てた。すごい美人だったよ」
「人違いじゃろ?」

誰もいない授業中の屋上は、冬でも太陽の光が当たればポカポカして暖かい。音楽室から零れ堕ちるオペラの音楽が空で踊り、校庭からは体育の授業の試合の声が漏れる。いろんな音が混じり合う授業中の太陽の匂いとこのの場所があたしは大好きだ。そしてきっと彼もそうなのだろう。
まるで日向ぼっこをする猫のように目を細めどこか遠くをぼんやりと見つめる仁王の髪は太陽に透けると銀色になる。

「.....お前は、綺麗じゃのう」

ふと目が合って暫く沈黙が流れた後に小さく口をあけたあとボソッと仁王が言った。

「......そう」
「否定せんとこがまた好みじゃわ」
「あたしもあんたの髪の色とか、すき」


ゆっくりと仁王の顔が近付いてキスをした。そして彼の体温に触れる。仁王の肌はものすごく白くて、あたしの肌よりもきっと白くて、太陽の光に触れると透けて、消えてなくなっちゃいそうなくらいいつだって綺麗。仁王のはキスは今までの誰より上手くて、優しくて、愛おしい。

「あ、―――――にお、」

いつのまにかスカートの中に入ってきた手に抵抗もせず身をゆだねる。あたしは心地よいこの先の快楽を過去何度か味わった。彼の細いけどがっしりした腕の筋が好き。女の身体にきっと触りなれている優しいけど少し強引な彼の触れ方が好き。痺れるくらい甘いキスに酔って、快楽に溺れる。仁王の上の乗って上から揺さぶられながら見下ろすと銀色の髪が綺麗に床に散らばって、朦朧とする意識の中でそれがすごく綺麗だなんて思いながらあたしはイってしまった。
あたしの腰を支える仁王の手が愛おしくてたまらなくて、その手を解いて抱きしめる。






それから1カ月たって、あたしは新しい男が出来た。
そして3日前、校門から10メートルほど離れた電柱の影で女子大生に思いっきりキスされていた仁王を帰る途中に見かけた。彼女が彼の首にしがみついている背中を見送りながら、あたしの愛おしくてたまらないその手が彼女の腰に回っていのを確認する。仁王とは目があった。あいつはあたしの目をそらさないまま他の女を胸に抱く。





また明日もあたしたちは屋上できっと逢うだろう。
そしてまた、仁王はあたしに触れながら綺麗だって言うの。


20120402
それでもせかいはまわりつづけるのだと。 続編
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